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雑文置き場

読者の脳を破壊すな華沢寛治【新人漫画家レビュー】

 

『這い寄るな金星』を読んだことで、

この作家は将来、

”読者の脳を破壊する系漫画家”として大成するという確信を得たので、

華沢寛治の商業作の全レビューをやっていきたいと思います!

 

同人もいくつかあるみたいですが、

そっちまで調べだすと調べだすときりがないので今回はやってません。

 

 

 

 

華沢寛治 『這い寄るな金星(1)』

期待の新星が描く、禁断の姉妹激重感情!

大学生の寺田芹果は今、インカレで知り合った男を“あざとく”籠絡しようとしていた。何が彼女を駆り立てるのか?そこには「ある女」に対する積年の復讐心が...!?

寝取られたら寝取り返す!?  新星・華沢寛治が描く禁断の姉妹バトル、開幕!

これは今年の年間ベストにも絡んでくるレベルの作品だと思います。

親同士が再婚してできた血のつながっていない姉妹による、どっろどろの愛憎劇です。お互いに相手の人生をめちゃくちゃにしてやりたいと思うようになる過程が丁寧に描かれているのが良いですね。特に、お姉ちゃんの「人間として壊れてる感」が最高です。

 

 

 

華沢寛治『さいれんとさいれん』

誰にも選ばれない私が、気になる人は…

好きな男から都合のいい女として遊ばれてしまっている主人公が、アルバイト先の個別指導塾で出会った先輩の女性講師に惹かれていく百合ものです。

あまり良い言葉ではないと思いますが、いわゆる「セフレ止まり」の女性が主人公になっており、自分が大切にされていないことに薄々気が付いていても、その立場から抜け出せない心情がよく描かれています。しかも、百合的な関係性がその閉塞感に穴を開ける展開で、後味もすっきりしています。

 

 

 

華沢寛治『眠たい浅瀬』

選ばれた私だけが知る、キスから始まるもの。

キスした時点で、終わるもの。

地味な女子高生の主人公が、ある日、クラスでも派手で人気者の女子から呼び出されて突然キスをされてしまいます。それからも度々呼び出されてキスを強要されているうちに、相手のことが好きになっていってしまう主人公でしたが……という展開のお話です。

主人公が知らず知らずのうちに、泥沼な恋愛闘争の中に堕ちこんでいく姿が味わい深い作品です。恋愛感情なんて知らなかった主人公が、ヤバい女にめちゃくちゃにされていく展開がいいです。傑作です。

 

 

 

華沢寛治『晴レとさかなで飯を食う』

後ろから見ればきっと、普通の「家族」。

想い続けてきた大学時代の先輩が、急に家を訪ねてきて、妻が亡くなって困っているので自分が仕事に行っている間だけ娘を預かってほしいと頼まれるが……という話です。

疑似家族的なお話で、作者の中では新味のある話なんですが、正直に言って物足りない作品ですね。ただ、ある種の喪失によってしかつながれない人間関係というのは、作者にとっても生涯のモチーフなのだとは思いますから、読む価値はあると思います。

 

 

 

華沢寛治『蒼く濃くなるスターライト』

【第80回ちばてつや賞ヤング部門 優秀新人賞】どちらを選ぶのが正解かなんて、わかってるはずなのにーー。クズな彼氏と真面目な同級生との恋心に揺れる、メンヘラビッチのイタ恋ストーリー

クズな彼氏から日常的に暴力を振るわれている主人公が、いつもそばにいてくれる真面目な同級生に対して淡い恋心を抱くけれども、今の彼氏から離れることができなくて……という鬱青春ものです。

真面目な同級生の視点から描けば、『隣の家の少女』みたいな話になりますが、暴力を振るわれている少女の視点で描いているところが面白いです。

選評を読んでいると、ちばてつや先生も脳を破壊されったぽいですね。

 

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華沢寛治『さくらの森の満開の下』

あの日私は、姉を失ったーー。憎悪に燃える女子高生による強姦殺人犯への復讐劇。ヤングマガジン第461回月間賞 佳作&TOP賞作品!

強姦殺人犯に姉を殺された主人公は、心に傷を抱えながらも必死に生きていた。一方で、姉のことを忘れたように夜の街で遊び歩く、姉の友人だった先輩。そんな先輩に嫌悪感を抱く主人公だったが……というお話。

傷ついた心を抱えた主人公が、ある意味では自分以上に傷ついていた人間を目の前にした時の衝撃がすさまじいです。姉の喪失によってつながるシスターフッドとして、よくできています。

 

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