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雑文置き場

【2024年1月漫画感想】KENT『大怪獣ゲァーチマ』、中原開平『狂狼は繭を喰む』、上村一夫『菊坂ホテル』

2024年1月に読んだ漫画の中で面白かったものを紹介していきます。

 

 

 

KENT『大怪獣ゲァーチマ(1)』 

海から突如出現した怪獣と共に起きた大波で、港町・匡波町は被災した。活動を停止した怪獣は、海に溶け魚介類の豊かな栄養素となり、匡波町の経済を潤し、豊穣の神ゲァーチマと呼ばれるようになった。被災者である少女・杜野宮矢子がその出来事を形に遺すべく作ったゲァーチマの人形は、土産物として販売され人気を集めていた。しかし、復興した匡波町に10年ぶりに怪獣が現れ…。怪獣は人類の敵か味方か?

 

怪獣を題材にした漫画って、なんとなくハズレが多い気がして食わず嫌いしていたのだが、周りの評判がいいので読んでみるとびっくりするほど面白かった。

まずもって単純に画力が高い。怪獣と人間が一緒の画面に収まっている時に、ちゃんと怪獣が巨大に見える。当たり前のことだが、これができていない怪獣漫画が多いのだ。

怪獣を経済資源として発展した港町という設定も面白い。怪獣を恐怖の対象として記録を残そうとする主人公と、怪獣を経済資源として活用して受け入れている町の人たちの対比も効いている。今後に期待できる作品だ。

 

 

 

 

 

中原開平『狂狼は繭を喰む(1)』

極道の娘・絹姫は敵対関係にある組との合併のための捧げ物として相手先に嫁ぐことになっていた。全て親に決められた人生に生きる意味を見失っていた絹姫だが、獣の如く最強で凶暴な護衛・紫安と出会い、自らの運命を切り開いていく!?狂った絆で結ばれたシスターフッドアクション!

 

極道の娘の元に送り込まれてくる殺し屋たちを、獣のように凶暴な用心棒の女がバッタバッタとなぎ倒していく痛快なアクション漫画。とにかく何もかもがでかい女が暴れまわっているところが面白い。

狂気と暴力が支配する極道の世界を、二人の女が協力しながら渡り歩いていく話でもあり、「シスターフッドアクション」のうたい文句に偽りなし!

 

 

 

 

 

上村一夫『菊坂ホテル』

美人画で有名な画家・竹久夢二や文豪・谷崎潤一郎が滞在した菊坂ホテルを舞台に、そのホテルの娘である八重子(やえこ)の目を通して、時代を代表する文化人達の人間模様を描いた大正浪漫劇画。彦乃(ひこの)との恋を彼女の父親に引き裂かれた竹久夢二は、息子・不二彦(ふじひこ)を連れて菊坂ホテルに入居する。そしてある日、不二彦を可愛がるホテルの娘・八重子と出かけた夢二は、妖艶な美女・兼代(かねよ)と出会い……!?

 

今月は過去作品から一つだけ、下宿を舞台にした漫画の中でも名作と名高い本作を読んでみた。

舞台は大正8年頃、実際に竹久夢二谷崎潤一郎が同じホテルに下宿していたという史実から創作されている。本当にこんなことがあったのかもしれないと思わせる、絶妙な時代の隙間をついた作品となっており、名作と言われるだけあって下宿もの漫画のお手本のような作品だった。

 

 

菊坂ホテル

菊坂ホテル

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