- 『アウト・オブ・ザ・コクーン』 (ビームコミックス) 原百合子
- 『きさらぎ異聞: 1 』(HOWLコミックス) x0o0x_ (原作), 筒井 いつき (漫画)
- 『シメジ シミュレーション 05』(MFC キューンシリーズ) つくみず
- 『ふたりで木々を』(楽園コミックス) 平方イコルスン
- 『十五野球少年漂流記(1)』 (サンデーうぇぶりコミックス) 白井三二朗
- 『片白の医端者(1)』 (ポラリスCOMICS) 岩飛猫
- 『ギミーアグリー 1』 (青騎士コミックス) 江ノ内 愛
- 『イズミと竜の図鑑 1』(MFコミックス フラッパーシリーズ) 凪水そう
- 『妹・サブスクリプション』(シリウスコミックス) 橋本ライドン
- 『あやかしの葬儀屋(1)』 (サンデーうぇぶりコミックス) あおたゆきこ
- 『デスサイズキューティー(1)』 (やわらかスピリッツ) 玉置勉強
- 『ドラゴン養ってください(1)』 (裏少年サンデーコミックス) 牧瀬初雲 (原作), 東裏友希 (作画)
- 『空は世界のひとつ屋根 1』 (楽園コミックス) 鶴田謙二
- 『ガールズ・アット・ジ・エッジ 1』 (MeDu COMICS) 犬怪寅日子 (原作), ハトリアヤコ (漫画)
- 『夏目アラタの結婚(12)』 (ビッグコミックス) 乃木坂太郎
- 『ふつうの軽音部 1』 (ジャンプコミックスDIGITAL) クワハリ (原作), 出内テツオ (漫画)
- 『MA・MA・Match』 (アフタヌーンコミックス) 末次由紀
- 『線場のひと 上 』(トーチコミックス) 小宮りさ麻吏奈
- 『エロチカの星(4)』 (コミックDAYSコミックス) 前野温泉
- 『ねずみロワイアル(1)』 (ヤンマガKCスペシャル) 佐々木 順一郎
- 『絢爛たるグランドセーヌ 25』 (チャンピオンREDコミックス) Cuvie
- 『アウトサイダーパラダイス : 2』 (アクションコミックス) 涼川りん
『アウト・オブ・ザ・コクーン』 (ビームコミックス) 原百合子
今際の際に揺れる、恋と執着。計5篇の恋を描いた作品集。
「一生怯えて暮らしてろ!」
今際の際に揺れる、恋と執着。
終末世界で願いは? 切ないボーイズ・ラブ
『もしも、明日世界が終わるなら』
カニバリズムの裏にある美しさが描かれた
『ドッグ・イート・ドッグ』
ゾンビ化した恋人への信頼と、青春の旅券
『スウィート・ドリームス・ゾンビ』
『繭、纏う』の洋子と華が描かれた後日譚
『アウト・オブ・ザ・コクーン』ほか、1篇を含む、5篇の恋を描いた作品集。
『繭、纏う』にて、恐ろしいほどに切り詰めたフェティシズムを描いてきた作者が、満を持して世に送り出す変愛漫画作品集です。
特に、ゾンビ化した恋人との逃避行を描いた「スウィート・ドリームス・ゾンビ」、カニバリズムでしか愛するすべを知らない二人を描いた「ドッグ・イート・ドッグ」は、異形の力作です。人体の破壊、あるいは欠損に対する狂気的なオブセッションを作者から感じます(誉め言葉)。
腐敗した果実の甘ったるい匂いがするような、濃厚で猟奇的な恋愛漫画が読みたい方におすすめです。
『きさらぎ異聞: 1 』(HOWLコミックス) x0o0x_ (原作), 筒井 いつき (漫画)
きさらぎ駅、現代に新生す――。インターネットで公開中の楽曲群をコミカライズした都市伝説の物語。学校でのいじめと崩壊した家庭を行き来する女子高生・柊渚。破滅的な人生に絶望した渚は、いつもの電車に乗ると蠢く影と不可思議な建造物が跋扈する異界に迷い込んでいた。「そこはきさらぎ駅。都市伝説に謳われる彼岸の駅です」SNSを通じた謎の人物に導かれまま、鍵となる青髪の少女を求めきさらぎ駅を彷徨う中で行方知れずの母親、そして渚の歪な心に光が当たり――。
じめじめギスギス系の百合作品ばかり描いてきた筒井いつき先生がホラー漫画を描いたら、じめじめギスギスしたホラー漫画になりました。嬉しいですね。
『シメジ シミュレーション 05』(MFC キューンシリーズ) つくみず
『少女終末旅行』のつくみずが描く、詩的でシュールなほのぼの日常4コマ!日常4コマの枠を超えた不思議体験の連続!
作者のあとがきに書かれている通り、本作は前作『少女終末旅行』とはコインの裏表のような作品です。『少女終末旅行』が物質的にも時間的にも極限に制限された世界だったのに対して、『シメジ シミュレーション』は物質的にも時間的にも無限の広がりを持った世界を舞台に二人の少女の絆が描かれています。
とにかく、最終巻は全エピソードが超エモい珠玉の傑作エピソードです。全人類が読むべきです。
『ふたりで木々を』(楽園コミックス) 平方イコルスン
「楽園」から4冊目の平方イコルスン作品集。「球形」「特典対象外」「始末」「米の密度」「林立」「とても手段」「最早」「偏重」「暴露」「憤慨」「脳外不出」「失望」「おさまり」「肉でしか埋まらない」「死にもの」「いい威圧」「胴を挟む」「そんなはず」「手の内」「かつて」など表題作含め21本収録!
いまさら平方イコルスンが面白いと言ったって、「そんなこと知ってるよ」と誰も驚いてはくれないわけですが、それでも本作はびっくりするほど面白いのです。
特に、最後に収録されてる短編「かつて」が素晴らしいので、ぜひ読んでもらいたいです。平方イコルスン作品の面白さ、その秘密が”会話”にあるということがよくわかると思います。
『十五野球少年漂流記(1)』 (サンデーうぇぶりコミックス) 白井三二朗
指導者なき野球部、何処へ?
新設野球部に監督不在?
新入部員も新監督も漂流だぁ!伝統女子高、博愛学舎は経営改善のため男子を受け入れる。
その目玉が硬式野球部!なのだが、創設を託した有名監督は急死!
残された新監督と部員、合わせて十五人は高校野球の大海原に放り出される!
勝利を求めて、野球部の漂流が始まる!
監督が急死してしまった新設野球部を、新任教師が監督を引き継いで奮闘する話です。
ここまではありがちな話ですが、ここからの設定が興味を引くものになっています。
なんと、旧監督に集められた14人の部員たちはそのすべてが投手だったのです。旧監督はどうして投手ばかりを集めてチームを作ったのか、その謎を新任教師は解き明かさないといけないわけです。とにかく、つかみはOK!と言っていいでしょう。
『片白の医端者(1)』 (ポラリスCOMICS) 岩飛猫
「さて、今日はどうされましたか…?」最近体調が悪い私が訪れたのは、街の小さな病院。格好いいけど胡散臭い「片白先生」が、暴れる患者を前に「フシギな治療」を始めます。妖精が詰まった少女、美しい死体袋、目玉の何か、かぐや姫の娘と人狼の恋――。片白先生の元に訪れる「人でなし」たち。悩む彼らの姿はまるで「人」のようで……。「人外」描きの名手・岩飛猫が贈る、幻想シニカルストーリー。
妖怪やモンスターといった「人でなし」を専門で診察する診療所のお話です。
既存の神話や伝説に登場する「人でなし」たちを、作者独自の解釈でアレンジした姿が面白い作品です。
基本的にはコメディー寄りの作品ですが、ところどころにみられるシニカルな視点も癖になる人が多いのではないでしょうか。続きに期待です。
単純に、片白先生みたいなおじさんが性癖な人は多いと思います。
『ギミーアグリー 1』 (青騎士コミックス) 江ノ内 愛
並行世界の「私」が7人! アイデンティティ・クラッシュストーリー!
逃げ癖がある少女・亜久里(あぐり)は20件目のバイトを無断欠勤した。
亜久里はそんな自分を変えたくて、いつも右足から履く靴を左足から履いてみることにする。
すると異空間に転送され、そこには7人の「私」が待ち受けていた……。
いわゆる並行世界もので、主人公の亜久里(あぐり)は並行世界からやってきた7人の自分自身と対峙することになります。最近は、「スパイダーバース」とかもヒットしたので、受け入れやすい設定かと思います。
基本的に1巻では7人の亜久里を紹介するだけなので、あまりお話は動かないのですが、とにもかくにも絵がうまいのです。なにか有無を言わせない絵のパワーがあります。
『イズミと竜の図鑑 1』(MFコミックス フラッパーシリーズ) 凪水そう
剣と友社 第2編集部。
50年前の名著、『竜の図鑑』改訂作業、勃発!竜といえば、金!
竜といえば、名誉!
竜といえば、神秘!
呪いで大人の身体になれない女性記者・イズミと、寡黙でダンディな護衛の獣人・アルフが、『竜の図鑑』の改訂作業を行うために各地を旅するファンタジー漫画です。
それもただのファンタジー漫画じゃなくて、”本格”ファンタジー漫画であるところが本作の強みでしょう。本作の舞台はありがちなナーロッパではありません。作者は、各地の文化や習俗をそれぞれ考え抜いて設定しています。
その細やかなまなざしは作品の隅々にまで行き渡っており、本作の主題でもある”竜”の生態についても、非常にユニークで読み応えのあるものになっているのです。
『妹・サブスクリプション』(シリウスコミックス) 橋本ライドン
妹思いでしっかり者、職場のみんなにも頼られる女性、みゆき。
しかし、みゆきの妹、今日子はちょっとした衝撃や怪我ですぐに動かなくなってしまう。
でも大丈夫。壊れても定期的に回収されて、全く同じ姿で帰ってくるから。
そう、彼女は妹をサブスクしている。
亡くなった人間を複製して蘇らせる技術〈レプリンカント〉が現れた未来、主人公のみゆきは妹のレプリカントと一緒に暮らしています。妹愛をこじらせた姉が破滅していく様が見所ですね。このテーマでやれることはやりきったうえで、きちんとバッドエンドに落とし込んでいるのが好感度高いです。
『あやかしの葬儀屋(1)』 (サンデーうぇぶりコミックス) あおたゆきこ
あやかしの死を見つめる追悼奇譚開幕。
あやかしの死に、穢れあり。それは土地を蝕み、時に化け者を生む、妖しき死の名残り…
あやかし殺しの罪人・八重波は、穢れを祓う葬儀屋の元で働くこととなり…
人とあやかし、生者と死者。決して交わらぬ両者をつなぐ“あやかしの葬儀屋”の旅路が始まるーー
こうした和風ファンタジー作品でオリジナリティをだすことは難しいと思います。元ネタになっている神話や妖怪の伝説があるからこそ、凡庸な描き手では既視感のある絵面になってしまいやすいのでしょう。
しかし、本作はその呪縛を軽やかに破っています。日本の伝承をベースにしつつも、作者独自の世界観を作り出すことに成功しているのです。今最も推せる和風ファンタジー作品です。
『デスサイズキューティー(1)』 (やわらかスピリッツ) 玉置勉強
「銃×ランドセル」の美少女ガンアクション
裏社会最強の女子小学生、降臨!
ランドセルを背負った死神――
裏社会の住人は彼女を「デスサイズキューティー」と呼んだ・・・結婚詐欺に引っかかりヤクザのフロント企業から横領したことがバレた崖っぷちダメ女・佐藤聡子(さとこ)。
組事務所で土下座する聡子が借金チャラの見返りに告げられたミッションは、素性不明の小学生・リルハの“姉”になることだった。
そして、凸凹“姉妹”のあまりに騒がしい日常が幕を開ける――
汚い『リコリス・リコイル』というのは言いえて妙ですが。
玉置勉強はガンアクションを描かせてもうまいんです。それにしても、どうして1巻だけで失禁シーンが二回もあるんでしょうか。
玉置勉強の全作レビューはいつかやってみたいですね。(成年漫画も含めて)
『ドラゴン養ってください(1)』 (裏少年サンデーコミックス) 牧瀬初雲 (原作), 東裏友希 (作画)
ドラゴンと暮らす下町ゆるファンタジー
ある日、大学生の村上は異世界からやってきたドラゴンのイルセラと出会う。
"一竜前"を目指すイルセラは、人間界で修行をする間
自分を「養ってほしい」らしく…!?
『スティアの魔女』の牧瀬初雲と、『魔もりびと』の東裏友希がタッグを組んだ作品です。この二人を結び付けた編集がすごいとしか言いようがないですね。
『魔もりびと』を読んだことのある人にはわかると思いますが、東裏友希は西洋ファンタジー風のモンスターや魔物を描かせたら当代随一の漫画家です。特に、魔物をかわいらしく、時にはエロティックに描くことにかけてはピカイチです。しかし、『魔もりびと』は世界観が硬派すぎて、一般にはとっつきづらいところがありました。
それが、牧瀬初雲のゆるい日常ファンタジーの原作と結びつくことで、ほどよい感じになっているのが本作の魅力でしょう。
『空は世界のひとつ屋根 1』 (楽園コミックス) 鶴田謙二
「楽園」本誌&web増刊で断続的に展開中の日本最南端?な奥の鳥島の空港長セレッソと彼女のアシスタント的な青年を中心とした鶴田謙二版大空港、なコメディ。カラーページが96枚!魅せる第1巻♪
鶴田謙二が描く健康的な半裸お姉さんと、南の島の飛行場で一緒に働く……そりゃあ、それよりも素晴らしいことはこの世にないですよ。わかりきったことです。
『ガールズ・アット・ジ・エッジ 1』 (MeDu COMICS) 犬怪寅日子 (原作), ハトリアヤコ (漫画)
風俗嬢がボーイを殺して廃校でひと夏を過ごす話
夏のある日、ピンサロで働くボーイ塩原が殺された。死体とともに消えたのは、その店で働く嬢が4人とボーイが1人。誰が彼を殺したのか!? 殺した理由とは!? 社会の片隅で生きる。境界を越える。怒れる女たちの物語ーー。
カクヨムに連載されていた犬怪寅日子の原作を、『真夜中の訪問者』のハトリアヤコがコミカライズした作品です。この組み合わせが、ほどよい化学反応を起こしています。
つまり、風俗嬢たちの暗い感情を主題としながらミステリ的な構成を持ち込むことによってリーダビリティーを高めた原作と、日常のちょっとしたモヤモヤを拾い集めて表現することに長けているが長篇は書いた経験のない漫画家、この組み合わせがベストマッチなのです。
お互いに足りないところをうまく補い合っている印象です。コミカライズとは、かくありたいものですね。
『夏目アラタの結婚(12)』 (ビッグコミックス) 乃木坂太郎
真珠とアラタの究極結婚サスペンス、完結!
アラタと真珠の逃避行は事故により終わり、命はあったものの真珠からの申し出によりふたりは離婚した。
そして入院先でついに自ら殺人の事実を告白した真珠。明かされる真実とは何なのか、そして2人の「結婚」はどこへ行きつくのか...!?拘置所でのプロポーズから始まったアラタと真珠の結婚サスペンス、物語はついに完結へ。
公式では「結婚サスペンス」ということになっていますが、個人的に本作は「法廷ミステリ」の傑作だったと思います。
なぜ本作が法廷ミステリでなければならなかったのか?、という問いは考える価値がありそうなので、考えがまとまったら別記事を書くかもしれません。
『ふつうの軽音部 1』 (ジャンプコミックスDIGITAL) クワハリ (原作), 出内テツオ (漫画)
ちょっと渋めの邦ロックを愛する新高校1年生・鳩野ちひろは、初心者ながらも憧れのギターを手に入れ、念願の軽音部に入部する。個性豊かな部員たちに困惑しつつも、バンドを結成することになるが――!? 超等身大のむきだし青春&音楽奮闘ドラマ、開幕!!
世の中にガールズバンドもののアニメや漫画が溢れすぎてて食傷気味なんだよな、と言う方にもおすすめな作品です。
本作は、ガールズバンドものの前に軽音部ものなのです。学校の部活でしか味わえない、生ぬるい青春感がたまりません。恋愛沙汰で部内がギスギスしたり、やる気のないメンバーとバンドを組んでしまってモヤモヤしたり、そういった等身大の青春が小気味よく描かれています。
しかし、主人公の根っこを支えているのは音楽への情熱なので、やっぱりこの作品は根っからのバンド漫画でもあるのです。素晴らしいですね。
それにしても、クワハリ先生って現代の蟲毒ともいうべき「ジャンプルーキー!」あがりの作家なので、なんか尊敬してしまいます。
『MA・MA・Match』 (アフタヌーンコミックス) 末次由紀
子供たちのサッカーを見守るのが生きがいの相川成実、45歳。
ある日、長男の拓実がサッカー部を辞めたと伝えられ大混乱。
そんな中、長女と同じサッカークラブに通う家族の喧嘩をきっかけに、
ママたちとチームを組んでサッカーの試合をすることになる…!
少年サッカーチームと、そのママたちのたった一度の試合を描いた作品です。
そのたった一度の試合を通して、様々な登場人物の悲喜こもごもが描かれ、人間ドラマが一点に集約していく構成は圧巻です。さすが『ちはやふる』の末次由紀先生と言わざるを得ないです。
とまあ、世の中のママたちをエンパワーメントするような素晴らしい漫画ではあるのですが、一方で本作は少年サッカーの影の部分も色濃く描き出しています。
つまり、子供の夢をサポートするという名目の元に疲弊していく母親たちと、そんな母親たちをリスペクトするどころかサッカーのできない女として馬鹿にしている子供と父親という醜悪な構造です。
もうこの辺が最高に胸糞で、いくら作者がいい話としてまとめようとしても、隠しきれない禍々しい力を秘めた作品です。
『線場のひと 上 』(トーチコミックス) 小宮りさ麻吏奈
ここは、まだ戦場だ──。
「戦後」と呼ばれる時代。
己の運命を国家や家族、そして時代に翻弄されながらも、
日本とアメリカに生きた4人の人間の物語。
戦後を生きる男女4人を、クィア的な視点から描いた物語です。
戦後を舞台にした漫画は数々ありますが、その描き方に新味があります。また、取材もしっかりされている印象で、歴史に記録されていない個人の物語を生々しく描くことに成功しています。
どうしてこんなに漫画の巧い人が急に生えてきたのかとびっくりしましたが、長らくアーティストとして活躍されていた方らしく、ポートフォリオを拝見すると、クィア・フェミニズムや結婚、生殖といったテーマに一貫して取り組んできた様子が見て取れます。やっぱり、急に漫画が巧い人が生えてきたわけじゃなくて、その人なりの蓄積があるんだなぁと思う今日この頃です。
『エロチカの星(4)』 (コミックDAYSコミックス) 前野温泉
ハプニング続きの同人誌即売会をなんとか乗り越え、遠藤とよすがはさらに信頼を築いてゆく。ある日、二人は「桃源郷」編集部を訪ねるべく東京に出向くことに。
そこでよすがは、予想もしなかった真実に直面することとなる……。憧れと希望から始まった二人の物語。よすがの心に新たに芽生えたモノ、それは……。
“エロ漫画”制作に懸ける二人の青春熱血ラブコメ!
主人公たちの目の前に立ちはだかる売れっ子エロ漫画家との対決と、その結末が描かれた最終巻となります。
ライバルキャラが登場してから加速度的に面白くなっていたところだったのに、あっけなく終了ということになってしまいました。しかしながら、伏線はきっちり回収し、主人公たちの恋模様にも一定の決着はつけられているので消化不良感はありません。
本作に欠点があったとすれば、最終話まで読んでも主人公たちがどういうジャンルのエロ漫画を描いているのかもよくわからないところにあると思います。エロ漫画の話をしているのに、肝心のエロ漫画についてはよくわからないまま話が進んでしまう。一般誌に掲載されている以上、エロ漫画をそのまま載せることはできないわけですが、それにしてももう少しやり様があったのではないかと思わずにはいられません。
前野温泉先生には、主人公が描いていたエロ漫画を実際に作品として仕上げて、コミティアで売ってほしいです。
『ねずみロワイアル(1)』 (ヤンマガKCスペシャル) 佐々木 順一郎
修学旅行だと思って連れてかれたどこかの島。そこで宣告されたのは殺し合いが始まることだった。28日後に来る迎えの舟に乗れるのは5人だけらしい・・・・。突然の出来事にうろたえる優柔不断で弱気な西部(にしべ)君。果たして彼は生き残ることができるのか。かわいくてみえてくらっちゃう、ねずみデスゲーム開幕。
登場人物をねずみにして『バトル・ロワイヤル』をやった作品です。奇をてらってオリジナル要素を足すことなく、ほぼそのまんまの『バトル・ロワイヤル』をやっていることに妙な潔さを感じます。
それにしても、どうして”ねずみ”なんでしょうか?
『絢爛たるグランドセーヌ 25』 (チャンピオンREDコミックス) Cuvie
ずっとバレエをしていきたい…。悩みがありつつも、夢と希望にあふれた留学生活を送っていた奏だったが、コロナ蔓延という予期せぬできことで学校は閉鎖、帰国しての外出自粛という毎日を余儀なくされてしまった。踊りたいのに踊れない、皆に会いたいのに会うこともできない。先の見えぬ闇の中で、それでも奏はバレエへの愛を燃え上がらせる!
コロナ禍を描いた漫画作品は色々とありますが、まさか”あの時代の閉塞感”を最もビビットに捉えた作品がバレエ漫画から出てくるとは思わなかったです。
主人公が小学生の頃から成長を見守ってきた長期シリーズであるからこそ、今までは当たり前にできていたバレエが急にできなくなることで思い悩む姿を見るのはつらいです。しかし、いくらシリアスな展開になっても、作品の空気自体は重くなりすぎません。希望と情熱にあふれた漫画です。
『アウトサイダーパラダイス : 2』 (アクションコミックス) 涼川りん
とある中高一貫校の高等部。新聞部の2人と美術部の3人――計5人のクセつよ女子高生が繰り広げる、オカしくてちょっと可笑しな青春群像劇!『あそびあそばせ』の涼川りん最新作、待望の第2巻!!
以前、本作を紹介した時に『あそびあそばせ』のスピンオフと言ってしまいましたが、正確には『あそびあそばせ』とは別世界線での話だったみたいです。つつしんで訂正いたします。
ギャグと狂気と百合、この3つのせめぎ合いが本作の味ですが、2巻ではよりいっそう狂気が加速しています。怪しい自動販売機で購入した飲料を口にすると中にはミミズが入っていて……、という狂気的な展開から、ディズニー『わんわん物語』の某名シーンを彷彿とさせるようなラブロマンスにシームレスにつながるとは……誰も予想できなかった展開ではないでしょうか。やはり本作は今最も個性的で目が離せない作品です。